執行役員の類型と導入企業の状況

執行役員制度には大きく分けて二つの類型(取締役と兼務しているか否か)に分けることができる。それぞれ短所が存在する。


①ほとんどの取締役が執行役員と兼務している型

取締役であるかどうかは関係なしに、具体的な業務執行を行うかどうか否に着眼し、これを行う者を執行役員とする。

<短所>

近年のコーポレート・ガバナンス論やコンプライアンス重視の傾向からは、経営者の業務執行の妥当性および適法性の監督・規律を如何に構築するかという点に関心が集中しており、わが国でも取締役の業務執行者からの独立性を重視する見解が勢いを増している。


②取締役と執行役員の兼務はない型

全社的な意思決定に参加する者を取締役とし、各部門にのみ責任を負う者を執行役員とする。

<短所>

取締役会と執行役員とが全く別々の者で構成されるとなると、両者間の意思疎通が十分図れないのではないかというではないかという問題が生ずる。また、実務面としては、日本社会において、商談の席に「取締役」の肩書きのある人物が出る、出ないでは雲泥の差があるといわれている。


・執行役員制度を導入している企業の状況

取締役が執行役員を兼務する企業は、執行役員制度導入企業のほぼ半数である。しかし、役員一覧に執行役員を兼務している旨の記載がない場合でも、実際は特定の事業部長や工場長の職にある取締役がかなりの数存在し、また代表取締役は、法的には取締役会から業務執行権限を委譲された執行責任者であるため、実際は執行機能を担当していると考えられる。これらの実質的な兼任者数を推計すると、兼任比率は80.6%になる(早稲田大学ファイナンス研究所「日本企業の取締役改革」)。

また、取締役数の適正化と併せて執行役員制度を導入した企業では、従来の使用人兼務取締役は単なる執行役員となり、従来の役付取締役クラスが執行役員を兼務する取締役となることが多い。